演劇鑑賞、美術鑑賞の場でも熟年女性たちが元気がいい。NHK教育放送の趣味の番組は、熟年のための講座と言い換えてもおかしくない。熟年層が多彩な趣味を楽しむ姿は、歓迎すべき光景である。しかし私には、都会に暮らす熟年層、定年層の人間たちがそのために多額のお金を消費しなければならない事実が気になる。場所の移動、入場料、授業料、さらには自宅で一人で楽しむ場合でも教材費や材料代がかかりそうだ。そうしたお金を必要とする趣味を私は消費的趣味と呼んでいるが、田舎で自然を相手とした趣味はこれとは対照的である。田舎だから、お金がまったくかからない、とは言いきれない。私の妻は、引っ越してから庭で花を育て続けていたが、最近になって突如、その熱意が急上昇し、夏場ともなると早朝に目覚め、子どもたちの朝の食事の時間まで、二時間ほど庭に出るのが日課となってしまった。そのために妻は、車でホームセンターに出かけ、花の苗や種子や肥料、殺虫剤などをどんどん買いこみはじめ、私はいくらお金が出ていくのか肝を冷やして眺めていた。ところが数字は、私が恐れていたほどでもなかった。自然相手の遊びは、金の額に応じて喜びが増すというものではないようだ。